奥が深いビールの世界。近年はコンビニエンスストアにも、数多くのクラフトビールが並ぶようになりました。その人気は20代、30代の需要に支えられています。実際2023年に行われたキリンビールのクラフトビールイベントの最多層は、20代の若者でした。またレシートアプリONEの運営会社WED株式会社のデータによれば、クラフトビールは「未婚で子どもがいない家庭」で支持されています。
このようにクラフトビールの人気は広がっていますが、初めて飲む方にとっては「どれを選んだらいいのだろう?」と迷う方も多いでしょう。
そんな方におススメなのが、ペールエールです。ペールエールは、クラフトビール初心者の方にピッタリなビールで、地域ごとの味わいを楽しむことができます。本記事では、ペールエールに関する情報について、詳しく解説します。
1. ペールエールとは
1-1. 酵母の種類が味を左右する
ペールエール(英:Pale Ale) は、イギリス発祥の伝統的なエールビールです。「ペール」とは「淡い」という意味で、ペールエールは明るい琥珀色のビールです。また「エール」とは、「上面発酵ビール」のことです。これは発酵が進むと麦汁の上部に酵母が浮き上がる性質の酵母を使っています。下面発酵より高めの温度(15~25℃)で発酵させます。そのため、フルーティーで香りが高いのが大きな特徴です。
一方日本で一般的なビールは、ラガービールといわれるものです。「スッキリ」「のどごしが爽快」で、原料は麦芽・ホップ・水と同じですが、「ラガー酵母(下面発酵酵母)」が作っています。
つまり同じ原料・製法でも、ビールの味わいは酵母の種類によって全く異なるのです。例えば、世界には100種類のビールがあるといわれています。あなたは、ラガー以外の世界を知ってみたいと思いませんか?その第一歩が、ペールエールなのです。
1-2. 歴史
ペールエールは、今から400年ほど前の18世紀に、イングランド中部のバートン・オン・トレントで誕生しました。ここでは、古くから修道院でビールが醸造されていました。当時人々が飲んでいたビールの多くは、褐色でした。しかし出来上がったビールは、それよりも「淡い=ペール」色でした。そのため、ペールエールと呼ばれるようになったのです。イギリス伝統の『バス ペールエール』が有名です。
ペールエール誕生のキッカケは、1697年のビールの原料となる麦芽(発芽した大麦)への課税です。そこで節税するために新しい製法が模索され、ホップを増やしたペールエールが生まれたのです。
1-3. 特徴
ペールエールには、以下のような特徴があります。
・色合い/明るい琥珀色、ゴールド~銅色
・味わい/ホップの苦みとモルトの甘み、香りのバランスが良い
・香り/柑橘系のフルーティでアロマの香り
・アルコール度数/4.5%~6.2%
・飲み口/程よい口あたりとキレがあり、風味はしっかりしている
1-4. おススメの飲み方
華やかな香りを満喫するためには、冷蔵庫から取り出した後に飲み口の膨らんだグラスに注ぎ、少し温度を上げてから飲むのがおススメです。そうすることでペールエールの香りが立ち、豊かな風味と深い味わいを満喫できます。
1-5. ペールエールの人気を示すデータ
日本国内のペールエールの市場シェアや出荷量データは、近年公表されていません。その背景として、クラフトビールや輸入ビール、プライベートブランド(PB)の台頭で、ビール大手メーカーのデータだけでは市場全体を反映できなくなったことが挙げられます。
しかしクラフトビールは、2023年1~8月の総出荷量が1万118.0キロリットルと報告されています。これは前年同期比9.1%の伸びを示しています。また関東地方は、出荷量が4,880キロリットルと最多となっています。
2. 主なスタイル
2-1. イングリッシュ・ペールエール(ビター)
イングリッシュ・ペールエールは、イギリス発祥のペールエールです。発祥の地名から「バートンエール」と呼ばれることもあります。イギリスでは、一番オーソドックスなビールといえます。有名な銘柄としては、「バス・ペールエール」や「ボディントン・パブエール」などがあります。
2-1-1. カミカツペールエール
徳島県西部の耕作放棄地を活用して育てられた大麦を使用しているのが、カミカツペールエールです。イギリスのパブで古くから飲まれている味を再現しており、「The International Beer Cup 2023」では金賞を受賞しました。上勝町は日本で初めてゼロ・ウェイスト宣言を掲げ、その理念のもとに生産されています。味は麦本来の甘味とカラメル風味があり、柑橘のような香りの余韻を楽しめます。
ユニークなのは、ワインなどの洋酒に使われる樽を活用し、古樽醸成ビールに取り組んでいることです。このゼロ・ウェイストの取り組みは多くの賛同を得て、国内のワイナリーやウィスキー蒸留所から樽が集まりました。そして樽の個性に合わせてビールが選ばれています。樽詰めされたビールの中には数年間を経るものも!またKAMIKATZ BEERの醸造所「STONEWALL HILL」では、予約制で工場見学もできます。
2-2. アメリカン・ペールエール(APA)
アメリカン・ペールエールは、アメリカン産のホップがふんだんに使用されているのが大きな特徴です。アメリカで誕生し、アメリカのクラフトビール文化の象徴ともいえる存在です。ホップの香りを感じながら、ゴクゴク飲めるビールです。
近年のペールエールは、このアメリカン・ペールエールが主流です。世界中で醸造されており、人気の銘柄を以下にご紹介します。
2-2-1. ヤッホーブルーイング/よなよなエール
よなよなエールは、クラフトビールを日本に定着させた立役者的存在としても知られています。製造メーカーのヤッホーブルーイングは、日本のクラフトビールの最大手です。他にも「インドの青鬼」「水曜日のネコ」「裏通りのドンダバタ」「正気のサタン」などがあります。このネーミングの「よなよな」は、「毎晩=よなよな」という意味です。つまり特別な晩だけでなく、毎晩のようにエールビールを楽しんで欲しいという気持ちが込められているそうです。
このビールは、アメリカンホップの代表格カスケードが使われています。カスケードはビールの香りづけに使われており、ハーバルやスパイシー、シトラスなどのキャラクターがあります。よなよなエールの場合、レモンやグレープフルーツのような華やかな香りを楽しめます。メーカーの推奨温度は13℃で、この温度は香りとコクを味わうおススメの温度です。初めてペールエールに挑戦する方には、入門編の銘柄としておススメできます。
2-2-2. 伊勢角屋麦酒/ペールエール
ビール界のオスカーといわれている「The International Brewing Award」で、日本で初めて3つの金賞を獲得したのが、伊勢角屋麦酒のペールエールです。伊勢角屋麦酒は三重県伊勢市にある醸造所で、「伊勢ぺ」の愛称で親しまれています。ユニークなのは、「研究開発型のブリュワリー」を目指していること。職人さんの勘や経験に頼るのではなく、日々蓄積されたデータを解析し、品質向上に活用されています。
3. ペールエールの製法について
ビールの原料は、「麦芽」「ホップ」「酵母」「水」です。ではペールエールの色や香り、味わいはどのようにして生み出されるのでしょうか。その工程を詳しく解説します。
3-1. ペールエールの製法
ペールエールの製法は、基本的にエールビールの製造方法と同じです。具体的には上面発酵(Ale yeast)を使いますが、原料や温度管理に特徴があります。
3-2. ①製麦(モルティング)
ペールエール製造に使用する麦芽は、主にペールモルト(pale malt)です。その元になる大麦(オオムギ、英:Hordeum vulgare)は、イネ科の穀物です。ちなみに世界的な生産ランキングは、1位ロシア、2位オーストラリア、3位フランス、4位ドイツです。この大麦の発芽した芽と根っこを取って乾燥させ、熱風をあてて乾燥させたものが麦芽です。また大麦には二条大麦と六条大麦があり、ビール醸造には二条大麦が使われます。
麦は農産物でありながら、生き物でもあります。品種や栽培場所だけでなく、収穫された年によっても成分や性質が変化します。そのため製麦(モルティング)には、天然物である麦を一定の品質を持った醸造原料に加工する高度が技術が求められます。
3-3. ②仕込み(マッシング&ロイター)
マッシングとは、ビールの素になる麦汁を作るために、「麦芽を糖に変えること」です。具体的には、粉砕したモルトと副原料を混ぜ合わせ、モルトの酵素で麦芽のでんぷんを発酵可能な糖に分解します。この時の温度は65℃〜68℃で、1時間前後行います。マッシングの方法は、大きく分けて「定温マッシング」「ステップ・インフージョン・マッシング」「デコクション・マッシング」「BIAB」の4種類があります。
また糖化した麦汁を麦芽かすから分離(濾過)する作業を、「ロイター」といいます。この時フィルターのようなロイター板を使用し、麦芽のかすが流れて麦汁に混ざらないように回収します。
3-4. ③煮沸(ボイル)&ホップ添加
麦汁の煮沸工程は、ビールの味や風味、品質、安全性に直結する重要な工程です。「予熱」「初期沸騰」「煮沸」の3段階を丁寧に行い、質の高い麦汁を作ります。また麦汁の殺菌やビールの混濁の原因であるタンパク質の熱凝固による除去、不快な臭いの除去も行えます。例えばこの段階でハーブ類を加えると、その香味が麦汁に反映されます。これらの全工程を行う場合、約70~90分かかります。
近年のビール作りにおいては、ハーブの代わりにホップが加えられます。ホップはアサ科のツル性の植物で、ビールの苦味や香り用に使われます。このホップの受粉前の球花のルプリンに含まれる「アルファ酸」が、熱で「イソアルファ酸」に変わり、爽やかな苦味のもとになります。例えば苦味がつくホップは、「ビタリングホップ」と呼ばれています。アメリカンペールエールでは、カスケードなど柑橘系の香りのするホップが好まれる傾向があります。
3-5. ④冷却&酵母添加(ピッチング)
次にホップ香が移った麦汁を冷却します。冷却方法には、「2段階麦汁冷却法」と「一次麦汁冷却方法」があります。2段階麦汁冷却法は、まず冷水で麦汁を冷却し、その後グリコールやアルコール溶液でさらに冷却します。一方、一次麦汁冷却方法は、氷水で1段プレート式熱交換器を使用して冷却します。この2つの冷却方法のどちらを採用するかは、ビール醸造所の規模や運用上の好みによって異なります。
麦汁を急冷して発酵温度(18〜22℃)まで下げると、発酵タンクに移して上面発酵酵母(エール酵母)を加えます。そして一週間ほど低温発酵させると、酵母が麦汁中の糖分をアルコールと炭酸ガスに分解します。その結果、若ビールが出来上がります。
3-6. ⑤発酵(主発酵)
発酵(主発酵)の温度は15〜20℃前後で、期間は4〜7日程度です。この時、エール特有のフルーティな香り(エステル)が発生します。ペールエールや、スタウト、アルト、ヴァイツェンといったビールは、下面発酵と比べると高温であまり時間をかけない上面発酵酵母を使って醸造されています。上面発酵の場合、発酵が進むと表面に酵母が浮かび上がるのが大きな特徴です。クラフトビールでは、多くの種類のエールが作られています。
3-7. ⑥熟成(セカンダリー)
「お酒を熟成する」と聞くと、ワインやウィスキーをイメージする方が多いかも知れません。しかし、ビール作りにおいても熟成は大切な工程です。クラフトビールは熟成させることで、香りや味わいが変化するのです。ペールエールの熟成の場合、発酵が終わったビールを冷やして落ち着かせます。期間は1〜2週間で、低温(5〜10℃)で熟成させます。この時、沈殿物(トラブ)を除去し、味の調和と透明感を出すようにします。
3-8. ⑦炭酸添加&瓶詰め
最後に炭酸を加えて、瓶詰めや樽詰めを行います。ビールを炭酸化するには、外部から炭酸を添加する方法と、二次発酵を促す方法があります。前者の場合、二酸化炭素ガスの直接注入か、ホームブリューイング時にビールを密閉容器に入れ、炭酸ガスボンベで高圧をかけて炭酸ガスを溶け込ませます。近年は、クラフトビールの樽詰め配送サービスも人気です。事前に予約しておくと、到着前日に樽詰めされた新鮮なクラフトビールを楽しめます。
4. ペールエールに合う料理とは?自宅で作れる動画をご紹介
美味しいクラフトビールを満喫するには、ビールに合うおつまみは欠かせません。しかも自宅で簡単にできて美味しいとなると、これはチャレンジするしかありません!ここでは、見ながら簡単に作れるおつまみレシピ動画をご紹介します。
4-1. 450万回再生!人気料理家コウケンテツ氏が唐揚げの作り方を伝授!
クラフトビールに合うお料理の筆頭格は、なんといっても唐揚げ!しかも自宅で簡単に作る方法がわかるのが、この『【450万回再生人気レシピ】完全保存版!何個でも食べられる!軽やか&ジューシー!王道おうち唐揚げの作り方』です。大人気料理家のコウケンテツ氏が、やり方を丁寧に教えてくれます。コメント欄には、「本当にお店より美味しい唐揚げができます!」「今までで一番わかりやすく美味しいです」といった声が寄せられています。ぜひトライしてみてください!
4-2. イギリス流おつまみはフィッシュ&チップス!世界が認める味を再現!
ペールエールの本場イギリスのパブで、おつまみといえばフィッシュ&チップス!その味を再現できるのが、『世界が認める味!!フィッシュ&チップスの魅力と作り方[イギリス料理]』です。フィッシュ&チップスは、スコッチエッグ、ハギス、スターゲイジーパイに並ぶイギリス定番料理の1つ。この動画を見ながら、家で簡単本格フィッシュアンドチップスが作れます。塩でもケチャップでも、タルタルでもサワークリームでもOK!これであなたの自宅がHUBになる!?
4-3. 自宅で美味しいハンバーガーが作れる!オーロラソース風タレも魅力!
近年グルメバーガーと一緒にクラフトビールを楽しむ方が増えています。天気の良い日に、山や川で美味しいハンバーガーとポテトとビールを味わうのも粋なものです。そんな時自宅で本格バーガーを作れるのが、この『【美味ハンバーガーの作り方】シェイクシャックバーガーを手軽に作る再現レシピ!ぜひ、作って欲しい!』です。ポイントは特製ソース!マヨネーズやトマトケチャップだけでなく、パプリカパウダーやガーリックパウダー、カイエンペッパーも入れます。
4-4. ビアバーで出るようなスパイシーカレーが自宅で!レシピを全公開!
しっかりスパイスを効かせた香りの際立ったカレーに、よく冷えたカレーが抜群に合います。ビアバーの定番メニューにカレーがあるのも納得です。そんなカレーを自宅で作れるのが、『【今日から出来るスパイスカレー】入門編:スパイス3種で作れる簡単チキンカレー!』です。パウダースパイスやコリアンダー、クミン、ターメリックを使って深みのある味を実現できます。ビールに合う料理のラインナップには、スパイシーカレーは欠かせません。
5. まとめ
ペールエール(Pale Ale)は、イギリス発祥の伝統的なビールスタイルです。その最大の特徴は、ホップの香りとほろ苦さです。飲む前に、柑橘系や松、ハーブのような香りが立ち上がるのがたまりません。アメリカンペール(APA)は特に香りが鮮烈で、グレープやトロピカルな風味を味わうことができます。
またホップの苦みだけでなく、モルト本来のコクと甘みも味わえます。このような味のバランスが良いのが、ペールエールの魅力です。軽すぎず、重すぎず、色々な食事にも合わせやすいのです。例えば、唐揚げや焼き鳥、フィッシュアンドチップスやハンバーガー、グリル料理との相性が抜群です。
こういった点から、ペールエールはクラフトビール初心者におススメです。

国内外から厳選した本当に美味しいクラフトビールと美味しいFOODで会話も弾む!ご来店をお待ちしています!
・名称/FAM333(ファムスリースリー)
・ジャンル/クラフトビールバー
・住所/東京都渋谷区千駄ヶ谷3-3-3 エグゼクティブ原宿B1
・最寄り駅/副都心線 北参道駅 2番出口より徒歩3分
・営業時間
月・水・木・金・土/11:30~00:00
火/15:00~00:00
定休日/日
※ランチ営業は、火曜日と日曜日はお休みになります
・貸切/可(20人以下)
・メニュー/飲み放題、3時間以上飲み放題
・フード/唐揚げ、フィッシュ&ソーセージ、ローストビーフ、フライドポテト他
・予約・お問い合わせ/03-6812-9135
・ホームページ/https://www.fam333.com/